居酒屋、居食家はかた一番どり

はかた一番どり」は、福岡県の農業振興の一環として、福岡県農業試験場にて 長年研究開発され、福岡県産の銘柄鶏として麻生渡(あそうわたる)福岡県知事に命名していただき誕生しました。当初、生産者の方や、販売に携わる多くの人 達が努力するにもかかわらず、認知度の低さから、売上は低迷していました。
そんな中「はかた一番どり」の美味しさを広く伝えるため、「はかた一番どり」を使用した居酒屋「博多一番どり居食家あらい」の一号店を福岡市東区に出店しました。

他にない焼き鳥の大きさと美味しさで、多くのお客様から支持を頂き、以来九州各地に出店し、現在では博多を中心として100店舗を越えるまでとなりました。

居酒屋、博多一番どりの歴史写真

道経一体思想を活かし”積極経営”に臨む

<道経塾 No.40 (2005.12)より抜粋>

1.おいしいものをできるだけ安く

「水炊き」 「がめ煮(筑前煮)」などの郷土料理で知られる、全国一の鶏肉消費地・福岡。鶏の味にはちょっとうるさいこの土地で、今、とある〝焼き鳥″居酒屋チェーン が注目を集めている。
ブランド鶏の名前を冠したその屋号は「博多一番どり居食家あらい」。運営を手がけるのは県内鶏肉卸大手「㈱あらい」(福岡県古賀市) の外食関連会社「あらいフードサービス㈱」(同)だ。
福岡空港から国道三号線バイパスを北九州方面に東進すること約十分、複車線沿いに構える空港東店は、平成十二年にオープンした直営第一号店である。
平日 でも店内は、午後五時の開店からほどなくして埋まり始める。
店内に一歩足を踏み入ると、左右から「いらっしやいませッ!」と活気ある掛け声が飛ぶ。

「ど うしたらお客様に心から喜んでいただけるか、この視点が接客から調理、メニューづくりに至るすべてのサービスの基本です」と語るのは、「あらいフードサー ビス」および経営母体の「あらい」 の社長を務める新井眞一氏。
「商品政策のコンセプトは〝おいしいものをできるだけ安く″。例えばこの焼き鳥串、旨味 の多いはかた一番どりをたっぷり刺していますが、これで二百円ならお客さんは驚きません。九十五円でお出しするから感動していただけるし、喜んでいただけ るんです」と熱っぽく語る。

居酒屋、博多一番どり創業 「水炊き」   「がめ煮(筑前煮)」などの郷土料理で知られる、全国一の鶏肉消費地・福岡。鶏の味にはちょっとうるさいこの土地で、今、とある〝焼き鳥″居酒屋チェーン が注目を集めている。ブランド鶏の名前を冠したその屋号は「博多一番どり居食家あらい」。運営を手がけるのは県内鶏肉卸大手「㈱あらい」(福岡県古賀市) の外食関連会社「あらいフードサービス㈱」(同)だ。
福岡空港から国道三号線バイパスを北九州方面に東進すること約十分、複車線沿いに構える空港東店は、平成十二年にオープンした直営第一号店である。平日 でも店内は、午後五時の開店からほどなくして埋まり始める。店内に一歩足を踏み入ると、左右から「いらっしやいませッ!」と活気ある掛け声が飛ぶ。 「ど うしたらお客様に心から喜んでいただけるか、この視点が接客から調理、メニューづくりに至るすべてのサービスの基本です」と語るのは、「あらいフードサー ビス」および経営母体の「あらい」 の社長を務める新井眞一氏印。「商品政策のコンセプトは〝おいしいものをできるだけ安く″。
例えばこの焼き鳥串、旨味 の多いはかた一番どりをたっぷり刺していますが、これで二百円ならお客さんは驚きません。九十五円でお出しするから感動していただけるし、喜んでいただけ るんです」と熱っぽく語る。

居酒屋、博多一番どり店舗

味と量感、低 価格の三要素を並立させたメニューづくりが「居食家あらい」 の生命線。メニューは定番で約九十品目。このうち二十八品目が主力の焼き鳥串で、価格帯は八 十円(皮串)から百六十円(つくね串)。
鮮度が要求される「一番どり和風たたき」 「一番どり刺身盛り」など、他チェーンではなかなか味わえない特選メ ニューも五百~六百円に設定、「客単価は二千百円前後、ファミリー層の多い日祭日は二千円を切ることもある」 (新井社長)という。
こうした商品政策を支えるのが、同チェーンの経営母体であり、鶏肉卸で六十年の実績を持つ 「㈱あらい」 の存在だ。〝鶏肉のプロフェッショナル″であ る同社の供給力があればこそ、従来のブロイラーより旨味が多く、歯ごたえのよいブランド鶏「はかた一番どり」を主原料として使用できるのであり、さらに 「味」「鮮度」「価格」「量感」を同時に実現させる同チェーンの強力な商品政策が可能になるのである。
同業者からも〝焼き鳥革命″と評される「居食家あらい」 の存在は出店当初から話題を集め、空港東店は一時、「数時間待ちの行列ができた」 (新井誠・ あらいフードサービス㈱取締役統括部長)ほどの盛況ぶりに。その後、店舗は年間二十店ペースで増え、沖縄を除く九州全県に進出、四国、中国地方にも出店を 果たした。平成十七年十二月現在で直営二十一、FC(フランチヤイズ)七十の計九十一店に到達、オープン五年で百店舗に迫る快進撃が続いている。

2.失敗が生んだあらいFCの展開術

居酒屋、博多一番どりのメニュー 「居食家あら い」の躍進の理由を探ると、上記の商品政策ともう一つ、店舗の出店政策に行き着く。特に店舗展開の核となっているFC店の加盟システムはどうなつているの か。「実は今も本格的なFC加盟店の募集は行っていないんです」とあらいフードサービス㈱の銘田和博専務は話す。
「今あるのは、取引先などからの『ぜひ FCをやらせてほしい』との要望にお応えする形で始めたもの。資本や経験の有無より、当社との信頼関係があるかどうかを加盟の第一要件にしています」とい う。 こうした同社のFCに対する姿勢の裏には、「居食家あらい」の展開前、他社チェーンのFC加盟店として味わった失敗経験がある。あらいが多角化の観 点から外食事業に進出したのは平成九年、ある大手の焼き鳥居酒屋チェーンに加盟し福岡県内にFC店を出した。「FC本部は売上月五百万の見込みを示してい ましたが、実際は開店効果が薄れるにつれて減り、月商はせいぜい百五十万。本部とは相当ケンカしました。ただ今思えば、こちらも本部任せで自助努力が足り なかった」と新井社長は振り返る。その後、交渉の末に冷凍だった串モノを自前の生肉に変更する特例措置を引き出して持ち直すも、結局二店目を出せぬまま三 年で同チェーンから撤退。回転寿司のFC展開も試みるが、本部との意見の食い違いから、やむなく退いた経緯があった。
そうした苦境の中、福岡県が開発した新銘柄鳥「はかた一番どり」 の加工・流通権を得たことから、アンテナショップとして始めた「居食家あらい」がヒッ ト。多店舗展開が始まるわけだが、当初、出店は直営方式に限る方針だった。「FCの難しさを痛感していたからです。途中から取引先に限ってFC方式を始め ることになりましたが、そこではいかに儲けるかより、加盟店とどう信頼関係を深めていくかを第一に考えました」 (新井社長)。

結果、同社が打ち出した方針は、新規店舗の内外装工事も指定業者をとらない入札方式にするなど、加盟店の〝本部不信″の原因となる不透明な利益構造は徹 底排除した。
「加盟店さんには〝互助″の精神でやりましょうと言っています。私たちは加盟店が繁盛するよう〝旨み″を削って支援しますから、加盟店さ ん自身も努力して、どうしたらお客様に喜んでいただけるかを追求して下さいと。加盟店、本部、お客様ともに利がある〝三方善″のFC展開が私の理想です」 と新井社長は語る。

4.「居食家あらい」素材へのこだわり

居酒屋、博多一番どりの焼き鳥 「居食家あら い」が提供するメニューの主原料「はかた一番どり」は平成11年、「ブロイラーよりおいしく、地鶏よりも安く購入できる鶏肉を」とのニーズを受け、福岡県 農業総合試験場が、食味がよい在来地鶏と成長が早い米国産鶏を交配させて開発。徹底管理された飼育環境のもと、八女茶を配合した無薬飼料で育てられ、ブロ イラーに比べ旨味成分「イノシン酸」が約15%多く含まれる。ブロイラーより割高な分、一般の居酒屋店の原価率が30%前後なのに対し「居食家あらい」は 40%超と高いのが課題だったが、店舗網拡大に伴うスケールメリットで、最近は40%を切りつつあるという。

3.積極経営の原動力は道徳にあり

創業者で先代 の父・潔氏から受け継いだ「㈱あらい」を、二十年で十倍の年商六十億円(グループ合算) にまで育て上げた新井社長。辿った道のりは決して平坦ではなかっ たが、岐路に際して判断の羅針盤としてきたのが、三十三歳で出会った「モラロジー」(道徳科学)だった。「道徳を取り入れるほど、経営は積極的になる」 が持論。「ギブアンドテイクではなく〝ギブアンドギブ″の精神で、ほんとうにお客様の喜びと安心だけを考え抜けば、商売の知恵は湧き出てくるものです」と いう。外食事業参入の決意の真には、〝長年学んだモラロジーの考え方を、飲食サービスの場面でどれだけ実践できるか″という思いもあつた。

また、一枚岩なチェーンづくりに向けた価値観共有のため、FC加盟の条件に「日本道経会紹介ページ日本道経会」(事務局‥千葉県柏市)への入会を提示。同じ道経一体思想の足場に立った〝異体同心″のチェーンづくりに傾注する。

今後の課題は、いかにチェーンの展開速度に合わせて人材を育てていくか・・・。
同店では大型店を除き、正社員は店長一人。店舗運営のノウハウやアルバイ トの教育方法などは、事前の現場研修でみっちり教えるが、「一番のカギは、うちの理念にどこまで意識を向けてくれるか」(銘田専務)。今年度は来春以降 の展開に備えた「内部充実の年」と位置づけ、直営店の出店を抑制。モラロジー研究所(千葉県柏市)の講座受講や社内勉強会での学習も含め、店長クラスの 育成に力を入れる。

百店舗目前の〝足踏み″も、新井社長は「これも高慢になるなとの戒め」と受け止める。「敵は自分の中にある。常に三方善の足場を見失わず、〝一千店舗″を夢に、謙虚、堅実に歩んでいきたいと思います」